岩手医大とJAXAの夢のコラボレーション
宇宙の神秘に迫る、
油井亀美也宇宙飛行士
ミッション報告会をレポート!
岩手医大×JAXA
世界で初めて解明したタンパク質の立体構造
岩手医大薬学部の阪本泰光助教とJAXAらの研究グループは、多剤耐性菌や歯周病菌のペプチド代謝に重要な役割を果たす酵素と非常によく似た構造と機能を持つペプチド分解酵素 DAP BIIを、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟において結晶化。得られた結晶のX線結晶構造解析により、世界で初めてDAP BIIの立体構造とペプチド分解機構を解明した。この研究は、既存の抗菌薬と異なる仕組みで多剤耐性菌や歯周病菌に対して作用する抗菌薬の開発に役立つ貴重な成果となった。
きぼう内で慎重に作業する、油井亀美也宇宙飛行士 (C)JAXA/NASA
宇宙空間でなければ結果が得られない結晶生成実験の意味
一連の研究で、タンパク質の結晶生成実験をISSの「きぼう」で実施したのには理由がある。それは、宇宙では「対流」や重いものが沈下する「沈降」という現象がないために、地上よりも良質な結晶が得られる為だという。この環境は地上では再現不可能であり、宇宙空間で行ったからそ得られた貴重な結果。今後様々な分野で研究がより深まって行くに違いない。今回のイベントはこの素晴らしい研究成果とJAXAの活動を広く知ってもらうため企画されたんだ。
DAP BIIにペプチドが結合し様子 ⓒ岩手医科大学 坂本泰光 助教
岩手医科大学薬学部助教
博士(薬学)
阪本 泰光(さかもと やすみつ)先生
●略歴/1971年熊本に生まる。2002年長岡技術科学大学大学院博士後期課程単位取得退学、07年昭和大学保健医療学部講師、08年岩手医科大学薬学部助手、09年より現職。
●抱負/タンパク質の立体構造に基づいて、創薬研究を進めています。現在、抗菌薬の効かない病原菌が増えてきています。歯周病菌だけでなく、タンパク質やペプチドを栄養源とする細菌に対する抗菌薬の開発に結びつけばと考えています。
宇宙開発は壮大な夢のミッション
国際宇宙ステーション(ISS)で過ごした142日間の研究・実験。
油井亀美也宇宙飛行士ミッション報告会〜亀の恩返し〜 in 岩手県矢巾町
心が若ければいつでも挑戦できる
「中年の星」油井宇宙飛行士が語った宇宙のすばらしさ
3月13日に行われたミッション報告会には、本会場・サブ会場合わせて約1,000人が来場。国際宇宙ステーションでの任務の報告会とトークショー、人工衛星やロケット、宇宙服のレプリカなどの展示コーナーもあり、改めて宇宙のすばらしさを知る機会となった。油井さんがISSに滞在した期間中には、日本の補給船「こうのとり」をロボットアームを操作し捕まえるという大役も見事に果たした。他国の補給機の失敗が続き、物不足に陥っていた中、油井さんと地上運用管制チームが一体となった「チームジャパン」の総合技術力が国際的に注目された。また、ISS滞在中に生成し持ち帰られた高品質のタンパク質結晶は岩手医科大学での新薬の開発研究にも役立てられている。今後は、次に長期滞在に挑戦する大西宇宙飛行士のサポートや、ロシア語・英語を活かして世界の橋渡し役など何でもチャレンジしていきという。常にチャレンジ精神で挑む油井さんの今後の活躍にも期待だ。
補給船「こうのとり」で届けられたフルーツ。「宇宙に新鮮な果物が届くのは本当にすごいこと。とても嬉しかった。」その喜びぶりは写真でも分かるとおり。
(C)JAXA/NASA
ISSとISS内での油井さんの様子 (C)JAXA/NASA
教えて!豆神さま 油井さんが滞在した国際宇宙ステーション(ISS)ってどんなところ?
ISSは地上約400km上空に建設された宇宙施設で、地球1周を約90分で回っているんだ。大きさはサッカーコートとほぼ同じくらい。ISS計画には世界15ヶ国が参加していて、「きぼう」日本実験棟で研究が行われているよ。
油井さん教えて! 宇宙飛行士になるには…?
子供たちの純粋な質問が飛び出した質問コーナー。その内容をちょっとだけご紹介。
Q.宇宙食っておいしいですか?
とてもおいしいです。ロシアは缶詰のご飯と肉、日本はカレー、アメリカステーキ。どの国の物もおいしかったです。
Q.宇宙の一日はどのくらいですか?
ISSは90分で地球を一周するから、日の出と日の入りが1日に16回あります。ISSでは時間をイギリスの世界標準時間に合わせて生活しています。
Q.宇宙飛行士になるためにやらなけれはならない事は?
大事なのは、一つ目は学校の勉強をしっかりすること。二つ目は家のお手伝いをすること。周りの人たちが何を求めているのかを考える力が大切です。三つ目は、色んな事に興味を持って、外で遊ぶこと。
Q.宇宙から岩手県はどう見える?
宇宙からみた岩手県は自然が美しかったですね。紅葉の時期に赤く色づいた山々がとてもキレイでした。
展示コーナーには「こうのとり」「はやぶさ」やロケットのレプリカ、宇宙飛行士気分を味わえる顔だし宇宙服も!
油井さん自らが会場を走り回り、子供たちの質問に分かりやすく丁寧に説明。やさしい語り口に油井さんの人柄が溢れていた。
JAXA宇宙飛行士油井 亀美也(ゆい きみや)プロフィール
航空自衛隊テストパイロットを経て、2011年ISSに搭乗する宇宙飛行士に認定された。2015年7月23日〜12月11日までISS長期ミッションに参加。写真が趣味でISS滞在中にも宇宙空間の美しい写真をTwitterに投稿。フォロワーは17万人を超える。
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油井亀美也Twitter @Astro_Kimiya
未来の研究者・
宇宙開発者を目指す
子供たちが結晶作りに挑戦!
JAXAの山田博士(医学)と岩手医大の阪本助教の指導のもと、小学生〜中学生までの60人が「リゾチーム」という卵の白身に多く含まれるタンパク質の結晶化に挑戦!
右:JAXA有人宇宙技術部門きぼう利用センター博士(医学) 山田 貢さん
左:岩手医科大学 薬学部阪本 泰光 助教
液体を吸い取るピペットや小さなカバーガラス、ピンセットなど、実際の研究に使われる実験器具の扱いに苦労しながらも、みんな真剣に作業に集中。
最後に顕微鏡で確認すると、「キレイ!」「すごい!」という声が。多くの子供たちが、結晶化に成功したんだ。参加した子供たちの中には、宇宙や星に興味があり、宇宙に関わる仕事がしたい! 宇宙に行ってみたい! と目を輝かせていたよ。将来、この中から宇宙飛行士が誕生しているかも!?
岩手医大の学生や、盛岡三高科学部の生徒も子供たちをサポート。
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Data
学校法人 岩手医科大学 矢巾キャンパス
〒028-3694 紫波郡矢巾町西徳田2-1-1
TEL.019-651-5111
[駐車場]あり